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無職系ライターのリアルな日々~日和見きなこ~

組織に属すということにどうにも耐えられなかった私は無職になり、フリーライターになりました。そんなダメな私の毎日の記録

なぜ盗撮教師は携帯を破壊してしまったのか

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最近ちょっとした話題になっている事件がある。

クレヨンしんちゃんでよく知られるあの埼玉県春日部市で中学の体育教師が女子生徒の着替えを盗撮していたというものだ。

しかもそれがばれた経緯というか、ばれた後の経緯があまりに笑えるものだから朝のニュースでも取り上げられてネットでも大騒ぎである。

 

「学校を守りたい!」

 

そう言って自らの盗撮カメラであるスマートフォンを破壊した彼。

一体何が彼をそうさせたのか。海外で心理学をかじっていた兼ミステリー小説でプロになりかけた、とある無職が考える。

 

目次

 

何故体育教師は自分のスマートフォンを使ったのか

まず多くの人が疑問に思うことがある。

何故彼はわざわざ足がつきやすい自分のスマートフォンを使用したのだろうか?

これに関して、ネットでは「頭悪すぎ」といった意見が飛び交っているし多くの人がそう考えると思う。

まあ、盗撮で捕まったこと自体が頭悪いというのは正直否定できないかもしれないが、自分のスマートフォンを使ったのには「頭が悪い」とは、ほんの少し違った理由があるのかもしれない。

 

体育教師は自分のスマートフォンを使ってバレないと思ったか

あの体育教師は、本当に自分のスマートフォンを使っても大丈夫だと思ったのだろうか? 実際は多分そんなことはない。

自分のスマートフォンを使って盗撮がばれれば、警察が自分まで行きつくことはわかっていたはずだ。だが、それならどうして彼はわざわざ最も足のつきやすいものを選んでしまったのか。

それは、考えが足りなかったのではなく、よく考えた結果スマートフォンでいいや。と結論付けたのではないだろうか。

 

絶対にバレない盗撮方法?

実はバレない犯罪を考えることはそんなに難しくない。

今回のケースで私が絶対に逮捕されない盗撮方法を考えてみよう。

まず盗撮がカメラのレンズを通して行われるという性質上、こちらが見えるカメラは相手にも見えることを考えなければいけない。ということは、どんなに工作したとしても盗撮自体はバレる可能性がある。

ということで絶対にバレない盗撮方法と書いたが、実際にはばれても大丈夫な盗撮方法を考えることになる。

であれば、カメラを用意しなければならない。スマートフォンなんてもってのほかだ。

しかし電気屋に行ってカメラを買っていいのだろうか?

当然小型で目立たない盗撮用のカメラが望ましいが、そんなものを店で買う? 仮にも自分は体育教師。そんなところを万が一保護者や生徒に見られたら一大事だ。

通販で買うか? いや、家族にバレるとまずい。その上通販の場合は記録が残る。

カメラが見つかる可能性がある以上、その機種や型番から警察が自分にたどり着くことは十分にありうる。

リサイクルショップ……? そもそもそんなカメラがあるかわからないし、買った証明書なりなんなりにサインさせられるかもしれない。そもそも監視カメラに映ったらそれだけで警察が辿り着くかもしれない。

 

さらにもう一つ考えなければならないことがある。

それはカメラの回収だ。このためには自分が女子更衣室に忍び込まなければいけない。とはいえ、塩素の段ボールを置くことはあるのだし、設置も回収もそれ自体は難しくないか……? しかし、回収した後もしもひょんなことから同僚や生徒にそんなカメラを持っていることがばれたら?

小型の、いや普通のビデオカメラでさえなぜ持っているのかと不思議に思われるかもしれない。もし自分が女子更衣室から出てきたところで声を掛けられたら?

 

…………そうだ、スマートフォンはどうだろうか?

 

スマートフォンならば面倒なことをしてカメラを入手しなくても今この場にある。それに回収した後に持っていても怪しまれないし、もし多少怪しまれても備品を置いたときに置き忘れた。と言えばなんとかなるかもしれない。

撮影途中でバレたら、まあまずいが自分は体育教師だし、証拠の保全はまず自分に一任されるはずだ。ま、なんとでもなるだろう。

 

と、こんな感じになる。

もし私がミステリー小説でこの盗撮話を書くのであれば主人公にはこんな思考を辿ってもらうことになるだろう。

バレる可能性は必ずある。

隠しカメラはバレにくいかもしれないが、やはり証拠を残さず入手するのは難しいし取り付け時、回収時にも持っていること自体が危険。

一方スマートフォンならば、撮影中にバレなければ設置回収は非常に簡単だし、持っていても全く怪しまれない。撮影中にバレてもプールで起こった事件は体育教師である自分の管轄。最悪、盗撮事件が明るみに出ないようにみんなを言いくるめて自分の手で処分すればいい。

 

…………なーんてね。

 

さあ、この思考はどうでしょうか? 意外と筋が通っていると思いませんか?

確かに結論としては盗撮に自分のスマートフォンを使うというあまりにも短絡的な内容になってしまいますが、その思考プロセスにはきちんとした理由があったのかもしれません。

しかし、実際にはこの計画は破綻してしまいました。

そして、体育教師は意味不明の言葉とともに携帯を破壊。それがほぼ自白となって、警察に怪しまれ、「調べればわかるよ?」と言われ逮捕に至りました。

彼の計画にはどこに綻びがあったのでしょうか?

 

計画破綻のシンプルな理由。空想と現実は違う

さて、この盗撮計画が破綻した理由、わかりますか? 実はこの計画自体には多分穴はありません。およそ考えうる大きな流れは想定されており、いくつもの事象の中で最も起こる可能性の高いパターンは網羅され、かつ対策も考えられています。

しかし、実際にはこれってうまくいかないんです。

何故なら、人は予想通りに動かないから。

例えば彼は、おそらく女子生徒が盗撮に気づいたとしても、真っ先に自分のもとに来るか、あるいは女性教師を経由したとしてもまず自分に話を通すものと思っていたのでしょう。

何故なら自分は体育教師。プールの授業だって担当しているはずです。であれば女子生徒が着替えているときには自分もプールにいる可能性は高い。そうでなくとも、体育中に起こった事件ならば最初に自分に連絡が行くのは必然。

ところが、実際には女子生徒はまず女性教師に連絡。女性教師は近くに「偶然」近くにいた男性教師たちに声を掛けたそうです。

ちなみにそのとき例の体育教師は「運悪く」次の授業の準備中でその場にはいませんでした。

その後体育教師が呼ばれたのか自ら来たのかわかりませんが、遅れて到着。

「この袋に携帯を入れてくれ」

と女性教師に言い、携帯を持っていこうとしますがその様子を怪しんだ男性教師たちがそれを制止。彼はそれを振り切って部屋に行き、問答の後ハンマーで破壊。

 

このように計画の実行には運の悪い偶然や、人々のちょっとした気まぐれのようなものが常に付きまといます。確かに先ほどの計画は起こりうる最も現実味のある想定がされていたでしょう。しかし、それでもその想定がうまくいくのは100分の1とか下手したらもっともっと低い確率なのかもしれません。

 

緊張状態という難しさ

そしてもう一つ、先ほどの計画の中に組み込まれていないことがあります。それは自分が緊張状態やパニックに陥った場合の想定です。

何故人は悪いことをするのか。それはリスクに見合うリターンがあるからです。そのために人は悪いことを計画するとき、リターンのほうにばかり気を取られ、リスクのほうにはあまり目を向けません。

例えば浮気なんかもそうですね。ばれたらやばい。と思う人はいても、

 

浮気が発覚した場合妻に離婚を切り出される恐れがあり、その場合離婚の慰謝料は300万くらいになるかもしれない。浮気相手にも配偶者がいた場合、そちらからさらに大きな慰謝料請求が来る場合もあり、子供がいれば親権は絶望的かつ養育費の支払いも行わなければいけないが当然倫理規定により会社はクビになるか、もしくはそうでなくとも居心地が悪くなるし、幸い穏便に済ませたと思っても、怒り狂った妻あるいは浮気相手の配偶者が会社に内容証明を送って来る可能性もあるし、友人に知られれば総スカンを食う可能性も――

 

なんてリアルなその後を想像する人はいるでしょうか?

ま、なんとかなるさ~と軽く考える人がほとんどでしょう。

 

そしてあまり想定していなかったリスクという現実が目前に迫ったとき、人はパニックになります。

え? なんで男の教師たちが集まってるの? やばいぞ。あの女教師だけなら言いくるめられたかもしれないけど、男がいたらそこで俺だけ証拠を持って一人で処分って厳しくない? あ、よく考えたらスマートフォンに俺の指紋も残ってるしひょっとしたら中身調べられるまでもなくその場でバレるかも。そしたら絶対職場にはいられないし盗撮で捕まったなんて周りに知られたら――

と、一気に自分の将来が不安に思えてくるからです。こうなると冷や汗はダラダラ、手が震え、とにかく証拠をなんとかしなきゃとそのことで頭がいっぱい。

 

小説や空想の世界の主人公はそんな状態に置かれても大丈夫な鋼の精神力を持っています。そして空想の中では自分だってスーパーマン。落ち着けば対処できるはず。そんな甘い考えで見通しを立てています。しかし、現実は甘くない。

その場でプールにスマートフォンを投げ込まなかったのが彼の最後の理性だったのではないでしょうか。そして、持ち去るのがやっとだった。

男性教師たちは彼の様子を怪しみ、証拠を提出しましょうと言ったそうです。

うまい言い訳? あるわけがないですよね。

ここから先はいくら想定しても無駄です。緊張状態にある中で即興の計画を立てて諸々の偶然にも対処しつつ証拠を外に漏らさず処分する。

そんなことは普通の人間にはできません。

結果が、

「学校を守りたい!!!!」

バキイイイイイイイ

 

だったのではないでしょうか。

別に彼を擁護する気はありませんし、「頭悪いなwwww」なんて意見を否定する気もありません。ただ、まあ、なんていうの? 無理やりこの記事に意味をつけるとすれば、悪いことするのって難しいからやめといたほうがいいよ。という感じです。

 

盗撮でもなんでもいいですが、悪いことを考えても実行するときっていうのは手を抜きます。理想と現実は違いますし想定外のことは山ほど起きます。映画や小説はそれら諸々のことを神様である原作者が仕切っているからうまくいっているだけなのです。

今回の事件やこの記事をきっかけに、悪いことするのって難しいんだなと思ってもらえたら嬉しいです。